※ 本記事は一般的な考え方の紹介です。税額・保険料は法定の基準額を、その他の費用は目安を用いています。実際の費用は車種・年式・地域・契約内容によって異なるため、最新情報は各社公式サイト・所轄の税務窓口でご確認ください。

「駅から遠いから車は必要」「たまにしか乗らないけど、あると便利」——マイカーを持つかどうかは、多くの人にとって一度決めたらあまり見直さない判断です。 ですが車の維持費は、車両価格だけでは終わりません。買ったあとも毎年・数年ごとに発生する費用が、実は総額の大きな部分を占めています。

マイカー所有には「見えている費用」と「見えていない費用」がある

車を買うときに真っ先に目に入るのは車両本体価格です。ですが所有を続ける限り、次のような費用が継続的に発生します。

毎年かかる費用

  • 自動車税(種別割): 排気量によって税額が決まっており、たとえば軽自動車は年額10,800円ですが、1.5L超〜2.0Lの普通車では年額36,000円、3.0L超では年額57,000円になります(2019年10月以降新規登録・エコカー減税適用なしの本則税率)。
  • 任意保険料: 年齢・等級・車種によって幅がありますが、継続的に発生する固定費です。
  • 駐車場代: 自宅に駐車場がない場合、都市部では月1万〜2万円台になることも珍しくありません。
  • ガソリン代: 走行距離と燃費に比例します。あまり乗らない人ほど、他の固定費に対する比重が相対的に大きくなります。

2年ごとにまとまって発生する費用(車検)

車検(継続検査)のタイミングでは、点検・整備費用に加えて次の法定費用がかかります。

費用目安
自動車重量税(登録車、2年分・0.5tあたり・新規登録13年未満)8,200円
自動車重量税(軽自動車、2年分・定額・新規登録13年未満)6,600円
自賠責保険料(24ヶ月・登録車)17,650円
自賠責保険料(24ヶ月・軽自動車)17,540円

重量税は新規登録から13年、18年を超えると税額が上がるように設計されています。古い車ほど車検のたびの負担が重くなるということです。

手放すときに初めてわかる費用(下取り価値の下落)

見落とされやすいのがこれです。車は購入した瞬間から時間とともに価値が下がっていきます。年間の価値下落率は人気車種ほど緩やかで、値落ちの早い車種ほど急になりますが、いずれにせよ購入時に払った金額を将来すべて回収できるわけではありません。この目減り分も、所有を続けるコストの一部です。

現金一括ではなくローンを組む場合は、これに利息総額も上乗せされます。

カーシェア・レンタカー側も3つの要素でできている

一方、カーシェア・レンタカーの費用は次の3つの組み合わせで決まります。

  1. 月会費(レンタカー中心の使い方なら0円のこともある)
  2. 利用1回あたりの料金(パック料金)× 月間利用回数
  3. 距離料金(走行距離に応じて課金される単価。距離料金のないプランもある)

マイカー所有と違って税金・車検・下取りの心配は不要ですが、使えば使うほど費用がかさむ変動費型という性質を持っています。

「損益分岐点」で考える:月に何回使うと逆転するか

この2つを比べるとき、「どちらが安いか」を一点の金額で決めようとすると、利用頻度によって結論が変わってしまいます。 たまにしか使わないならカーシェアが安く、頻繁に使うならマイカー所有の方が1回あたりの負担は下がっていきます。

そこで役に立つのが損益分岐点という考え方です。

マイカー所有の総額 = カーシェア・レンタカーの総額 となる「月あたりの利用回数」を求める

この回数より利用頻度が多いなら所有の方が有利、少ないならカーシェア・レンタカーの方が有利、という境目が数字で出せます。 駐車場代や保険料など所有側の固定費が大きい人ほど、この分岐点となる利用回数は多くなる(=カーシェアが有利になりやすい)傾向があります。

具体例で見る:都市部・週末利用なら差はどれくらいになるか

数字で見た方がイメージしやすいので、「都市部在住・駐車場代が高め・車に乗るのは週末が中心」という条件で試算してみます。

  • 車両本体価格250万円(コンパクトカー)
  • 月極駐車場代2.5万円、年間走行距離4,000km
  • カーシェア:月会費880円+6時間パック4,000円を月4回利用

この条件を7年間で比較すると、マイカー所有の総額は約522万円、カーシェアの総額は約187万円となり、差額は約335万円にもなります。駐車場代・自動車税・車検・任意保険といった「乗らなくてもかかる固定費」の重みが、この差の大部分を占めています。

同じ条件で損益分岐点を計算すると、月14回(ほぼ2日に1回)使って初めてマイカー所有と同じ総額になる計算です。「週末だけ乗る」という前提とはかけ離れた頻度であり、駐車場代が高い都市部では、体感よりもカーシェアが有利になりやすいケースがあることがわかります。逆に、駐車場代が0円で毎日通勤に使うようなケースでは、この結果は大きく変わります。

判断を誤りやすい3つのポイント

① 下取り価値の下落を織り込み忘れる

車両価格だけで「持ち出し」を計算し、下取りで戻ってくる分・戻ってこない分を無視すると、所有コストを過小評価してしまいます。逆に「どうせ安くしか売れない」と決めつけて価値下落を大きく見積もりすぎるのも禁物です。年間の価値下落率は車種によって差が大きいため、できるだけ実態に近い率で試算する必要があります。

② ローン金利の有無で総額が変わる

現金一括なら発生しない利息総額が、ローンを組むと上乗せされます。同じ車両価格でも、金利と返済期間次第で総額は数十万円単位で変わることがあります。

③ 距離料金があるカーシェアは、走行距離が多い人ほど不利になりやすい

距離料金が設定されているカーシェアの場合、走行距離が伸びるほど費用も伸びていきます。通勤や送迎で日常的に長距離を走る人は、カーシェアの距離料金だけでマイカーの燃料費を上回ることもあります。逆に、月に数回・近距離だけという使い方なら、距離料金の影響は小さく済みます。

まとめ:車両価格だけでなく「所有し続ける費用」で比べる

  • マイカー所有の費用は車両価格だけでなく、税金・車検(2年ごと)・保険・駐車場・下取り価値の下落まで含めて考える必要がある
  • カーシェア・レンタカーは「月会費+回数料金+距離料金」の変動費型
  • 「どちらが得か」は一点の金額ではなく、月あたりの利用回数の損益分岐点で考えると判断しやすい
  • 下取り価値・ローン金利・距離料金の3点は見落とされやすく、結論を左右しやすい

年間走行距離がもともと少ない人は、距離が少ない人のためのカーリースという選択肢もあわせて確認すると、選択肢がもう一つ増えます。

マイカー所有 vs カーシェアの生涯コストを試算すると、車両価格・税額・駐車場代など自分の条件を入力するだけで、損益分岐点となる利用回数まで確認できます。

参考にした情報

  • 東京都主税局「自動車税(種別割)」(2019年10月1日以降新規登録車の税率)
  • 国土交通省・自動車税info「自動車重量税額」(本則税率、0.5tあたり年4,100円、新規登録13年経過5,700円、18年経過6,300円)
  • 損害保険料率算出機構「自賠責保険基準料率」(2023年4月改定、24ヶ月)