※ 本記事は一般的な考え方の紹介であり、税務相談ではありません。経費として認められるかどうかは個々の実態によって判断が分かれるため、最終的な判断は税務署や税理士にご確認ください。
会社員が副業(個人事業)を始めると、「経費として計上できる支出が意外と見落とされている」というケースがよくあります。売上から経費を引いた金額(事業所得)が課税対象になるため、正しく経費を計上できているかどうかは、そのまま節税額に直結します。
経費として認められる基本条件
必要経費として計上できるかどうかの基本条件は、その支出が副業の売上を得るために直接必要だったかです。業務との関連性が薄い支出(純粋なプライベートの飲食・娯楽費など)は経費にできません。
一方で、「プライベートと業務の両方に使っている支出」は、業務で使った割合分だけ経費にできます。これを家事按分と呼びます。会社員の副業でよく見落とされるのは、まさにこの家事按分の対象になる支出です。
見落とされがちな経費の費目
副業で経費にできる可能性がある支出を、見落とされやすい順に整理します。
- 自宅の家賃・住宅ローンの利息:自宅の一部を副業の作業スペースとして使っている場合、床面積の割合分を経費にできます(例:60㎡の自宅のうち6㎡を作業スペースとして使う場合、家賃の1割)。
- 水道光熱費・通信費(インターネット・スマートフォン):使用時間や使用割合で按分します。24時間のうち業務に使う時間の割合など、合理的に説明できる基準で構いません。
- パソコン・周辺機器・ソフトウェア利用料:業務専用であれば全額、プライベートと共用なら按分します。10万円未満の物品は購入年に全額経費にできますが、10万円以上は減価償却(複数年に分けて経費化)が原則です。
- 書籍・セミナー・会費:副業のスキルアップに直接関係するものであれば経費にできます。
- 交通費:副業のための移動(打ち合わせ・仕入れ・納品など)であれば経費にできます。
家事按分の割合は「合理的な基準」と「記録」が命
家事按分でつまずきやすいのは、按分割合の根拠です。「なんとなく5割」ではなく、床面積・使用時間・使用日数など、第三者に説明できる基準で割合を決める必要があります。按分の根拠になった計算(面積の測り方、業務に使った時間の記録など)は、確定申告後も保管しておくと、後日の確認にも対応しやすくなります。
会計ソフト(freee・マネーフォワード クラウド・やよいの青色申告 オンラインなど)を使うと、家事按分を入力する欄が用意されているため、割合を決めて登録するだけで仕訳・帳簿に反映されます。
経費を増やすほど得とは限らない理由
経費の範囲を正しく洗い出すことは大切ですが、「とにかく経費を増やせば得」というわけではありません。
- 経費計上による節税額は、あくまで限界税率をかけた分です。10万円の経費を追加できても、実際の節税額はその何割かにとどまります。
- 業務との関連性が薄い支出まで無理に経費に含めると、税務調査で否認されるリスクが上がります。否認されると、その分の税額に加えて延滞税等が発生する可能性があります。
経費計上と合わせて検討されることが多い青色申告特別控除(白色申告か青色申告かの選択)については、副業は白色のままでいい? 青色申告特別控除65万円で得する金額の考え方 で判断軸を解説しています。
自分の場合でいくら変わるか試算する
経費として計上できる金額・青色申告特別控除の有無・iDeCoなど他の節税策を組み合わせると、年間の節税効果がどう変わるかを試算できます。
まとめ
- 経費として認められる基本条件は「業務の売上を得るために直接必要だったか」
- プライベートと兼用の支出は、床面積・使用時間などの合理的な基準で按分すれば経費にできる(家事按分)
- 見落とされやすいのは自宅家賃・水道光熱費・通信費・PC/ソフト・書籍セミナー・交通費
- 按分の根拠は記録として残し、無理な計上は避ける
- 節税額は限界税率次第で変わるため、実際にいくらになるかは試算して確認する
経費を正しく計上できても、そもそも投下した時間に見合う利益が出ているかは別の視点です。本業の時給を機会費用として差し引いた「実質時給」の考え方は副業は時給換算で割に合う?で整理しています。
参考にした情報
- 国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識」「No.1810 事業所得の課税」