※ 本記事は一般的な制度の考え方の紹介であり、特定の移住・投資判断を推奨するものではありません。税務・社会保険の扱いは個々の状況により異なるため、実際の手続きは専門家・所轄窓口にご確認ください。

「物価が安い国に移住すれば生活費が浮く」という考え方はよく聞きますが、 これだけで損得を判断すると見落とす要素があります。比較すべきは生活費の総額ではなく、 税・社会保険料まで差し引いた後の可処分所得です。

健康保険・年金の扱いが変わる

海外に住民票を移すと、国民健康保険の資格を失います。そのため一時帰国時に病院にかかると、 それまで加入していた保険が使えず全額自己負担になるケースがあります。国民年金についても、 海外居住中は強制加入ではなく任意加入に切り替わります(任意加入して保険料を納めれば、 将来の年金や障害・遺族年金の対象になります)。

住民税は毎年1月1日時点の住民登録の有無で課税が決まるため、いつ転出届を出すかによっても その年の税負担が変わってきます。

投資益への課税は移住先によって変わる

日本国内の特定口座での運用益には、一律20.315%の税金がかかります。移住先がキャピタルゲインを 非課税とする国であれば、この税率差がそのまま可処分所得の差になります。ただし、出国前10年以内に 5年を超えて日本に住み、かつ有価証券等の資産が1億円以上ある場合は「国外転出時課税制度」の対象になり、 含み益に課税されることがある点も押さえておく必要があります(多くの人には該当しない基準ですが、 資産規模が大きい場合は要確認です)。

為替リスクも「生活費」に効いてくる

現地通貨建ての生活費が変わらなくても、円安・円高によって日本円換算の負担は変動します。 「今のレートなら生活費が安い」と思っても、数年単位で見ると為替変動の影響を無視できません。

3つの差を合わせると、生活費の安さが相殺されることもある

3つの要素は別々に効くのではなく、合算して初めて損得が見えてきます。イメージをつかむための一例です(数値は説明用の仮定であり、特定の国を指すものではありません)。

項目内容(仮定)
現地の生活費日本より月5万円安い(年60万円の節約)
一時帰国時の医療費国民健康保険が使えず全額自己負担。通院1回で数万円の想定外支出が発生し得る
投資益への課税移住先が非課税なら年20万円の節税、日本と同水準の課税国ならこの差は消える
為替変動円安が10%進めば、現地生活費(円換算)は実質的に約5.5万円上振れする

生活費の安さ(年60万円)だけを見れば得に思えますが、医療費の想定外支出・投資益課税の扱い・為替変動のいずれかがマイナスに振れると、その優位性は簡単に相殺されます。「生活費が安い」という1点だけで判断せず、3つの差を合わせた可処分所得ベースで比較する必要がある理由はここにあります。

国によって「3つの差」の効き方はまったく違う

健康保険・年金の扱いは移住してもほぼ共通の話ですが、投資益への課税と物価水準は移住先の国のタイプによって大きく異なります。人気の移住先だけを見ても、法人・個人への課税がほぼない国、キャピタルゲインを非課税とする国、逆に社会保障が手厚い分だけ税負担も重い高福祉高負担国など、性質はさまざまです。「物価が安い」という理由だけで移住先を選ぶと、投資益への課税や社会保障の手厚さといった、生活費以外の差を見落とすことになります。

自分の条件で試算する

日本での年収・生活費・社会保険料と、移住先の年収見込み・現地生活費・想定為替レートを入力すると、 日本に住み続けた場合と比べて、数年間の累計可処分所得がどちらが多くなるか具体的に確認できます。

海外移住した場合の生涯収支を無料でシミュレーションするでは、マレーシア・タイ・フィリピン・ポルトガル・UAE(ドバイ)・シンガポールなど主要な移住先候補を1つ選ぶだけで、投資益への課税区分・ビザ維持費・現地の物価上昇率など関連する項目をまとめて概算入力できます。国ごとに手入力で調べ直す手間なく、上の3つの差を反映した試算がすぐに始められます。

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