※ 本記事は一般的な考え方の紹介です。実際の費用は物件・契約条件によって異なります。
引っ越しを検討するとき、多くの人は「敷金・礼金・仲介手数料・引っ越し業者の料金」を思い浮かべます。 ですが、実際に家計への影響が大きいのは、見積もりの段階では見落としがちな「隠れコスト」です。
見落としがちなコスト①: 二重家賃
新居の契約日と旧居の退去日がずれると、一時的に2軒分の家賃を払う期間が発生します。 引っ越し先を探すタイミングによっては、1〜2ヶ月分の家賃が余分にかかることになり、 単純な「新居の家賃差額」だけで比較すると見誤ります。
引っ越し業者の料金自体も時期によって大きく変動します。引っ越し業者各社の相場データ(引越し侍・価格.com等の集計)によると、単身の引っ越しは通常期(5月〜1月頃)で6万円台が目安ですが、進学・異動が集中する3月の繁忙期には14万円前後まで上がることがあります。2人世帯の引っ越しでは、通常期は約9万円、繁忙期(2月〜4月)は約13万円程度が目安とされ、3人世帯でも通常期(閑散期)約9.7万円に対し繁忙期は13万円を超えるケースが珍しくありません。二重家賃の負担は、こうした時期選びとも合わせて考える価値があります。
見落としがちなコスト②: 敷金精算
退去時には原状回復費用が敷金から差し引かれます。 「敷金が全額戻ってくる」と思い込んでいると、実際の手取りとのギャップに驚くことになります。 入居期間の長さや部屋の使用状況によって精算額は変わるため、事前に想定しておくことが大切です。
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復費用のうち賃借人(借主)が負担すべきなのは、故意・過失や善管注意義務違反、通常の使用を超える使用による損耗・毀損の復旧に限られ、経年変化や通常の使用による損耗(いわゆる自然損耗)の回復費用は本来賃貸人(貸主)負担が原則とされています。実際の敷金精算がこの原則どおりに行われているかは物件・管理会社によって差があるため、退去前に原状回復の範囲を確認しておくとトラブルを避けやすくなります。
「今の家に住み続ける」という選択肢も比較対象にする
引っ越しを検討するとき、つい「引っ越す前提」で費用を積み上げてしまいがちですが、 本来比較すべきは**「今の家に住み続けた場合」との差**です。 更新料や現在の家賃の推移も含めて比べることで、引っ越しが本当に得かどうかが見えてきます。
更新料の有無や相場は地域差が大きい点も見落とされがちです。国土交通省の調査(2007年)では、更新料を徴収する割合が神奈川県90.1%、千葉県82.9%、東京都65.0%とされており、令和5年度住宅市場動向調査でも、更新料がある場合「家賃1ヶ月分」と回答した世帯が最も多くなっています。一方で大阪府・兵庫県など更新料の慣行がほとんどない地域もあり、「今の家に住み続けた場合」のコストは地域の相場によって前提が変わる点に注意が必要です。
総額で比較する
家賃の差額だけでなく、二重家賃・敷金精算・初期費用まで含めた数年単位の総額で比較すると、 「家賃は下がるはずなのに、なぜか数年トータルでは損をしていた」という見落としを防げます。
引っ越しの損益を無料でシミュレーションすると、今の家に住み続けた場合との総額差が確認できます。
参考にした情報
- 引越し侍・価格.com等の引っ越し費用相場集計データ(2026年時点の目安)
- 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)
- 国土交通省「令和5年度 住宅市場動向調査」
- 国土交通省 賃貸住宅における更新料の実態調査(2007年)