※ 本記事は歯科診療報酬点数表に基づく代表的な治療パターンの一例を紹介するものであり、実際の治療内容・費用は歯の症状・位置・使用する材料・医療機関によって異なります。治療方針については歯科医師にご相談ください。

「痛みがないから」「時間が取れないから」と虫歯の治療を先延ばしにしている人は少なくありません。 厚生労働省「令和6年 歯科疾患実態調査」によると、未処置のむし歯がある人の割合は全体で28.2%(男性33.2%・女性24.3%)にのぼり、60歳以降はいずれの年代も30%を超えています。放置しているのは自分だけではない、というのが実態です。

歯を失う原因の1位は「虫歯」ではない

意外に知られていませんが、永久歯を抜歯する原因の1位は虫歯ではなく歯周病(37.1%)で、虫歯(29.2%)はそれに次ぐ2位です(8020推進財団「永久歯の抜歯原因調査」)。抜歯は65〜69歳で最も多く、抜歯全体の45%は60〜80歳の間に行われています。つまり「今は小さな虫歯だから大丈夫」という状態を放置し続けた結果が、数十年後の歯周病悪化・抜歯につながっているケースも多いということです。

今治療する場合と放置した場合の自己負担額を比較する

歯科診療報酬点数表(1点=10円)をもとに、代表的な4つの治療パターンで自己負担額(3割負担・1本あたり)を比較すると、次のようになります。

状態治療内容の目安自己負担額(3割・1本)
経過観察中の小さな虫歯充填(詰め物)約702円
しみる・欠けているクラウン(銀歯等)約1,422円
神経近くまで進行根管治療+クラウン約5,010円
放置した末路抜歯+ブリッジ約7,899円

小さな虫歯の段階で治療すれば約702円で済むところが、放置して抜歯・ブリッジまで進むと約7,899円となり、その差は1本あたり約7,197円です。複数の歯が同時に進行すればこの差はそのまま本数倍になります。保険診療の範囲内では「桁が変わるほどの差」ではありませんが、放置するほど選択肢が狭まっていく点が重要です。

抜歯した後の選択肢にはさらに大きなコスト差がある

歯を失ったあとの補綴(人工歯を入れる処置)の選択率は、ブリッジが31.2%と最多で、部分入れ歯19.7%、総入れ歯6.5%、インプラント3.2%と続きます(令和6年 歯科疾患実態調査)。ブリッジ・部分入れ歯は保険適用ですが、インプラントは自由診療となり、1本あたり約25万〜40万円が相場です(複数の歯科医院公表情報に基づく参考レンジ)。保険診療の範囲で治療できるうちに対応するか、自由診療も視野に入る段階まで進んでから選ぶかで、負担額の桁そのものが変わってきます。

「先延ばし」で本当に節約できているわけではない

治療を先延ばしにする最大の理由は「今は痛くないから」ですが、上記の比較が示す通り、悪化を待つことで自己負担額が下がることはなく、むしろ治療の選択肢が保険診療から自由診療側へ狭まっていきます。「様子を見る」こと自体は悪い選択ではありませんが、それが「治療費を節約できている」という意味ではない、という前提を踏まえておく価値はあります。

自分の状態で試算してみる

現在の歯の状態・自己負担割合・対象の本数を入力すると、今治療した場合と放置して抜歯・ブリッジに至った場合の自己負担額の差を具体的に確認できます。

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参考にした情報

  • 厚生労働省「令和6年 歯科疾患実態調査結果の概要」(未処置のう蝕を有する者の割合、補綴物装着状況)
  • 8020推進財団「永久歯の抜歯原因調査」(中央社会保険医療協議会資料に引用、抜歯原因の内訳)
  • 歯科診療報酬点数表(充填・歯冠修復・抜髄・感染根管処置・抜歯手術・ブリッジ関連項目)
  • 複数の歯科医院公表情報に基づく参考レンジ(部分床義歯・インプラントの自由診療費用)